毎朝散歩に連れて行けと鳴く今年確か17歳になる雄犬の,その日の機嫌で起こされてしまう。老人性痴呆も入り、目も見えているのかどうかわからない状態である。寒い朝だと丸く寝ていて起きてこないから、静かである。
それでも今年は暖冬とかで、テレビを5時に点けると、その明るさなのか、音声からなのか起き出して来てクーンと泣き出す。ところが痴呆のせいかそんなに正確なものでない。全くお天気屋である。ある朝は静かにしているかと思いきや、突然大きな声でクーンと鳴き出すのである。全くもって自分サイドの都合なのである。
着替えてから散歩に連れ出しても早速、歩くことを厭い出した。あれほど鎖の首輪を後ろに引っ張ってゼイゼイ喉を鳴らしながら前に前にと歩いていた犬が、今や早く歩けと引っ張られているのである。あれほど散歩をせがんで鳴いているのに、どういうわけか毎朝の散歩は一歩外に出ると全く駄目である。家の庭では放し飼いにしているのであるが駄目だ。
公園などもこれまでは草むらであろうと何であろうとズンズン突き進んでいたのに全くその気配すらない。尻尾を下ろしてしまい、キョロキョロして歩こうとはしない。一緒に散歩に連れて行っている一つ下の雌犬の方が、いつも先へ進んでいる。
この状態では、今年当たり危ないのと違うかなと思っている。散歩に行きたいと鳴いて連れ出すと歩けず、夕食時車の車庫入れ時には早くご飯を出してくれと泣き叫ぶ。それもワンワンと叫ぶのでなく、哀れな喉での泣き叫び声である。
真っ暗な中に大きな声でこのように鳴かれると参ってしまう。近所迷惑である。昨晩はあれほど食欲旺盛で有ったのが、ゆっくりかみ締めるように食べて、雌犬がおこぼれ頂戴と待つ有様である。これまではこの雌犬の分も取って食べていたのにこの状況は全く反対である。食欲も衰え、今朝の散歩でもご近所の人が、歩けないのを見て、「犬も歳を取ったら人間と同じで足にくるんやな」とポツリと話していた。