コンプライアンスとはネット辞書では「 要求や命令への服従。 法令遵守。特に、企業がルールに従って公正・公平に業務を遂行すること。」となっている。法治国家では市民だけでなく、企業や行政も当然法律に従わないといけないが、中には最近良く耳にするのが、上司やトップの命令により、違法を承知で指示命令に従わなければならないことが多い。その結果は常にいつかは発覚して、大きな犠牲を払わないといけない事件が後を絶たないことである。それも同業の食品会社に多いことが残念である。
食品産業は家族同様の零細企業から装置化された大企業まであるから一概には言えないが、鉄鋼等の金偏の付く産業と比べると歴史や制度、安全に対する心構えが違っている。最近だとHACCPの普及で衛生には進んだ企業も出てきたが、まだまだヒヨコの状態である。
それぞれ食べるもの飲むものなど、人の口に入れるものであるので、薬品ではないが、食品衛生には最近強い関心を持つようになって来た。中国などの最近の農薬投与などによる食品の汚染も、世界的な批判で次第に改善されてくることであろう。ところが、コスト意識を強く求めるために、安易に安全を飛び越してしまうことが、起こっている。
悪意ではないのであろうが、生産性等を重視するために食の安全が脅かされているのである。ところが先の北海道の「ミートホープ」社にしても、トップの一存で従業員が路頭に迷っているのである。会社を築きあげたとはいえ、いとも簡単に自己破産をしてしまった。当然それなりの覚悟をしてであろうが、会社を選んだ者は自分の責任とは言え、やり切れない思いだろう。
多年食品企業に従事してきた自分にとっては、これまで様々な出来事を見てきた。第三人者的に見ると、冷静に見られるが、その当事者にとっては、ラインから生産途中で床に落下した製品も、自分の責任となると思えば隠して、拾い上げ元に戻してしまう。このようなことは日常茶飯事である。
食品の生産だけなら、このようなこともあるだろうが、零細企業では、企業の存続をかけて毎日奮闘されておられることであろう。組織と言うより個人の力に負うことが多い。その個人に法令違反や公序良俗に反するようなことを強いているとも聞いている。突然の残業や休日出勤の強要、それもサービス残業の形で片付けられることが多い。
何よりも、そのことが違反しているとの認識が無いのである。そのようなことを知る前に、仕事に集中しろと言うのがトップの常である。周囲と遮断させて情報の入って来るのを恐れている。
一罰百戒で大手中堅の労働者救済も良いが、本当に救われるのは零細企業の従業員ではないかと思ったりもしている。