法令順守をしているかと問われれば、一般市民の答えは当然イエスと答えるだろう。さらに詳細に尋ねるとどうだろう。「あなたは信号を無視したことはありませんか」「スピードを法定速度で走行していますか」などと尋ねられれば、時々違反暦もあることを感じるかもしれない。それより「車の始業点検はしていますか」と問われれば、ここに来て大半は、自分の過失を認めることになってしまう。
「千円が落ちておればどうするか」と問われれば「一万円が落ちておれば」とは違った思いになるだろう。今日100円や10円を落し物として届ける人は皆無だと思う。
実は、自分の仕事の中で、法令違反を認識して仕事をすることほど辛いことはない。無知であれば気が楽であるが、違反を知ってそれに付随した仕事をすることは、法令違反に加担するように思えて、これは共犯である。指示命令であっても体を張って阻止するぐらいの気持ちを持っているかと言えば、長いものに巻かれてしまうようである。それが心苦しい。
中小企業でも、晴天白日堂々と営みを続けておられるところもある。しかし残念ながら違法行為を承知で労務政策を講じている会社もあるようである。諸策を法令に照らして脱法的に研究されているならまだしも、部下の違法行為指摘の進言に耳も貸さないで、それを敢えて行うことは確信犯的犯罪である。
労組も無く、会社としての経営的説明も無いのが中小零細の姿かも分からないが、法的無知に付け込んだやり方は許されたものではない。労働基準監督署等の監督機関も、一々会社訪問をして問題点を見つけ出すわけにも行かない現状では、該当労働者の訴えや、周りの従業員の声が出ないと、とかくこういった問題は時間と共に消え去ってしまうこととなる。
テレビの時代劇では「必殺仕事人」に請け負ってもらい、恨み辛みの無念を晴らしてもらうのであるが、法治国家の現代ではそうもいかない。結局そういう企業が伸びるはずが無いし、何時の日にか、化けの皮が剥がれてくるのだろう。そう思うとそのような会社から身を引くことの方が悔いが残らなくて済むかも知れないことだと思ってしまう。そんな悪夢をみて夜中に目覚めて、その後寝付けなかった。