金曜日の夕刻、会社から帰って来てから、着替えて散歩に出かけようとして勝手口から庭に放している犬を呼んでも出て来ないので、紐を持って庭に入って行った。すると庭に穴を掘ろうと一生懸命なのか、呼んでも聞こえていないのかそのまま続けていた。
15歳になるメスの老犬である。昨年末から急速に呆けてきたのか、どうも呼んでも聞こえていないようである。一つ年上のオス犬が居なくなってから、急に呆けたような状態が目に付く。穴を掘っている所へ行って、首輪に紐をつけようとしたところ、驚いて外へ飛び出した。いつもの散歩なら、勝手口を出ても、紐を早く繋げと待っているが、この日は何を驚いたのか、一目散で道路まで出て、お向かいの主人が車を出そうとしている前で邪魔をしたので、叱るとそのまま道路を散歩コースに走り出し、後を追った。
近くのおばあさんが犬を繋いで散歩をしており、そちらも老犬なのであるが、内の犬を見て、「ボケが来た犬を放したらあかんで!」と言っていたが、放して散歩させているのではなく、逃げたんだと言いたかったが、このおばあさんはおしゃべりで、一度話し出すと、私の母親の時代のことまで遡って喋り出し、極力避けている。
それに犬が、先先に行くものであるから後を追っているが、なかなか首輪を持とうとしているが追いつかない状態なので、その場を逃れて犬の後を追った。
団地の中を通り抜けると、今度は走り出した。益々差が開くばかりなので、久し振りに走ったが、10メートル程で、直ぐに息が切れて追うのを断念した。どこに行くのか見極めだけしておこうと、早足で追っかけたが、公園の方に向かわずに、家に戻る道を選んだ。結局家に戻って来たのであるが、家の周りを一周した。
本当に呆けてしまったのかと思うが、耳は相変わらず聞こえていないようである。2匹でいた頃は、オスが怒られ役で、要領良く立ち回っていたが、自分の天下となると、緊張感が無くなってきたのか、一遍にボケが始まったようである。まるで人間生活と同じように感じるが、人間の女の人は呆けることは少ないと聞いているが、犬の世界は男女一緒なのかな。