昨日の午後、隣の席で職業相談中の高齢のご婦人が突然大きな声を出され応対しているスタッフをきつく叱りつけて、挙げ句に悔し涙を流し捨て台詞を吐いて席を立たれた。声のトーンが高く当初から自説をくどくど述べられていたので気にはなっていたが、こちらも相談中であったので断片的なことしか耳に入らなかった。見かけは60歳過ぎのご婦人である。就職できないのが担当者の性にしているような物言いであった。
先輩職員がその後、心配して相談終了後横の担当者のところに声を掛けにきておられたが、私と同期入社で40歳のその担当者は少し興奮気味であったようで、経緯の申し送りをしておくとパソコン端末に早速入力し出した。
私はそのやり取りの途中から40歳台の女性の職業相談に当った。その方のリクエストの最初は年齢条件で合わず、2枚3枚とリクエスト分を見ていても合いそうなものは無かった。事務員の就職希望であるがこれまでの経験は無かった。
物静かでこちらから耳を傾けないと聞き取れないようなか細い声である。所内が混んでいて騒々しいので余計に聴き取り難い。その中でのヒヤリングで以前に応募して面接後駄目だった事業所の名前が出て来て、その不採理由を尋ねると、その方は在職中であったので、先方は急募の求人であったために時期的なズレがあったようである。
早速その会社を調べて、会社の担当者に過去の不採用者の再応募を受け入れてくれるかとの折衝をしたところ、少しは覚えておられたようだった。そのきめ手は、その方が不採用になったにも拘わらず、貴重な時間を割いて面接をしてもらった礼状を出しておられたことである。
それを聞いて、改めてその方に礼状を出されたことを確認すると、頷いておられた。今時採用のお礼は聞いたり、現に学生採用の場合には学校の進路指導室などではそのように生徒に指導して、私もそのような文章を何通も受け取ったことがあるが、不採用された会社への礼状は聞いたことが無い。
そのため先方の会社の担当者から再応募の了解も頂き、それに本来会社が記載するべき採否通知書を担当者はその方に預けてくれと言われ、採否はその方の意思にあるとの言い回しであった。
礼状に続く、先方担当者の粋な計らいである。そのことを紹介状を発行しながら彼女に伝え、応募先が霊園管理事務であり、そのような心配りでお仕事をされるとお客様に喜ばれますよと伝えると、思わず感極まり涙を流された。あわてて回りを見渡し、先ほどの横の高齢婦人に続き、またしても同期の私が女性を泣かしていると思われていないかと思った。
当初その方は応募も駄目だと思っておられたようである。以前に他の職員からも一度紹介して駄目だったところの紹介は無理であると言われたそうである。しかし先方が受け入れると言っているのであるから、そんな決まりがあっても打破して良いと相談もせずに独断専行した。経験が浅く、そのような決まりがあるのか知らないが、それがかえって良かったのかも知れない。
いずれにしても多くの紹介の中で、こんな些細な出来事でも良い出会いに合ったことを嬉しく感じる。人間ハート対ハートである。