自分でも聞かなければ良かったと後から後悔した。昨日水槽の水替えを家内に手伝ってもらってから、散髪に出かけた。この店は主人一人で運営しているが、年末などの忙しい時期には応援者が入っている。数年前迄は若い職人がおられたが辞められたようである。
独立でもされたのか主人に尋ねたら、一般のサラリーマンに転身され、
「この業界で一生身を置くのは大変である」
と以前に言っておられたのを聞いたことがある。
何時も通りに散髪をしてもらい、行った際も日曜日の昼前にも拘わらず、誰もおらずに直ぐにかかってもらい、終わる際も誰も入って来なかった。珍しいことである。
そんなことから、前から気になっていたことであるが、あまりにもつまらない愚問であるので人前で尋ねることが恥ずかしいので、そのままにしていたが、丁度お客さんがおられないので、終って席を立ち、料金を支払う際に思い切って尋ねた。
「散髪屋さんの散髪はどのようにされているのですか?」
髪型を尋ねたのではなく、二人で店をやり繰りされているのであれば、同僚にしてもらうことが考えられるが、一人で店を運営されておられるのであるから、仕事が終ってでは何処の店も同じ様に終っているだろうし、店の休日の月曜日は、どことも休日だろうと前から思っていたのである。
すると直ぐ様返答があり、
「良く訪ねられるのですが、散髪屋をしている友達に前もって電話して仕事の後でやってもらったり、月曜日でも休日でない店もあるのでそちらに行ったりしています」
とニタッとしながら渡した5,000円札のつり銭を数えて手渡しながら言われた。
「良くお客さんから聞かれるんですが、自分の頭の後は出来ませんものね」
と私と同じ様な質問を度々受けておられているようである。誰の思いも同じだなと店を出た。
私の頭の中には、「医者が病気になった際はどうするんだろう」とか「お寺さんが急に亡くなったら、誰がお勤めをするのだろう」と実に他愛も無い愚問がまだ残っているのだが。