一点差の重みの教えを昔聞いたことがある。100点と99点のことである。たかが一点差であるが、されど一点差は大きいのである。99点は100点満点の中でそれだけの限界であるが、100点の満点は120点の能力かも知れないし、200点かも知れない。だとすると高だか一点はその差が21点であったり、101点であったりするわけである。満点者の能力は限界知らずである。
要は99点者は更に磨きをかけないと上の者には適わないぞと云う教えである。先日の安富句会でその99点が2回あった。即ち「地」位句が2句あったのである。自分では僅差で「巻」を逃したと思っていたが、ふと先の教えを思い出したので書き留めておきたい。冠句は短詩文芸であるから読者の観念的な評価で違って来る。自分の自信作が没になったり、それほど力の入っていなかった句が取り上げられたりすることがある。読者である選者の価値観で決って来るのである。この日の句会の地位句をこの際紹介しておこう。
春名 豪人選
郷の彩 茅葺屋根に柿暖簾
藤中 雄飛選
阿弥陀仏 今日も見守る野に在りて(折句ア・キ・ノ)