朝の散歩と言っても実のところは、自分が率先してやっているのではなくて、犬が外に出せとせがんでいるのである。16年になる雄犬が散歩に連れて行けとノドを鳴らして鳴くのである。クーンと決して吠えないがうめき声にすら聞こえる。1歳年下の雌犬は鳴かない。実に要領が良いのである。いつも怒られるのは雄犬で、実はこの雌犬がけし掛けていることが多い。
それでも雄犬は鳴き続けご近所に早朝からご迷惑を掛けている。朝だけではない、夕方もそうである。夕食をねだって、私の車が帰宅してガレージに着くなりクイーンと大きな鳴き声が始まる。その際も雌犬は決して鳴かない。「私は慎ましいのだから」とでも言いたげな目つきをしているが、「ウルサイ!」と怒鳴りつけると、この雌犬は「私には関係無い」と大体その場から立ち去るのである。2匹とも繋いでいるのでなく、裏庭で放し飼いにしているのである。
庭に小便は良いのであるが、大便も良くしており、週に1回の清掃をしている。植えている芝生代わりの「龍のひげ」の上などいつものことである。便をした後の後ろ足のキックによって、これまでどれだけ「龍のひげ」を枯らしてしまっただろう。実に忌々しいが、一日一回の散歩の割ではストレスが溜まるのだろうか。
毎朝定刻に鳴き出す。どこで時間を知るのだろうか。朝寝床でニュースを見るからそのテレビの窓越しの明かりで起きて時間を知るのか、近くにJRの高架が走っているので、その一番電車の音を聞いて起きるのかわからない。
鳴く場所は、テレビのある寝室の出窓の下から鳴いていたりしたり、毎晩の餌を貰っている台所の外に居たりと様々である。日曜日などは、散歩時間も1時間程遅くするのであるが、決まって5時過ぎに鳴き出す。
最近は、寒くなってきて丸く寝込んでいることの方が多いので、時間が狂うことが多い。6時の散歩に出かけようとしてまだ丸くなっていることが多くなってきた。雌の方は呼んでも中々出て来ないことがある。風除けの縁の下や木陰の下に入っているのであろうか。毛の長い雑種であるが、いつも尻尾には枯葉や草が付いている。
そのような老犬も以前は雄犬が率先して前をゼイゼイノドを鳴らしながら引っ張って行ったものである。時には後ろを振り返り、もっと早く歩けよと言わんばかりに振り返っていたが、今や、雌犬がリードしていて、先頭を歩き、次に私が行き、雄犬は足腰が弱ってしまって、ついて行くのが精一杯である。
あれ程、早く散歩にと鳴きながら訴えているのに、一歩外へ出ると全く駄目である。「今のお前の状態を見れば恥ずかしくないのか」と言うのだけれど足腰が安定しないので力が入らないし、フラフラしている。そんなに寿命は長くはないとは思うのだが、このところ老人性痴呆も伴っているのか、朝の散歩と夕方の食事しか反応が無い。どこか遠くを見つめて哲学者のように考え込んでいたり?、寝込んでいたりとマイペースである。朝と夕方だけその存在感を迷惑声で鳴くのである。
家内はもう怒らなくても良いと言うが、家内が食事の餌を作っていても、早くくれと今度は叫ぶのであるから、実にたちが悪く叱らないとと思うのであるが、呆けてしまったようである。自分も犬年であるが、このように回りに迷惑を掛けるのではないかと寂しく思ってしまう。犬年もあと少しだけれど、来年は大丈夫だろうかと心配する今日この頃である。