無菌室なる部屋に初めて入った。昨日仕事を終えて帰る途中に携帯に家内から電話が入り、これから娘の運転で加古川に付き添いに行くとのことで、夕食の準備などについてのの電話であった。
すぐ近くまで帰っているので、娘への依頼は断っておくよう指示して、家に着くなり家内を乗せて加古川に向かった。前の晩初めて先方の要請で家内が病院に付き添いで泊まり、昼前に帰ってきたようであるが、もう一晩の依頼である。
母親の姉に当たる叔母が入院して1ヶ月を超えるが、週末から無菌室に変わり、それから付き添いが必要となったようである。叔母の孫娘と家内が交互に看病の付き添いをすることになった。叔母の娘は息子と一緒に理容業をしているため、予約等で店を空ける訳には行かず、仕事が終わってから見舞っているようである。
家内を送りがてら無菌室なる部屋に始めて入った。入室前の注意を家内から聞き、部屋の入り口前に備えられた紙マスクを着用後、手の消毒をして部屋に入る前に、その部屋だけのスリッパと履き替えるのである。
ドアは素早く開け閉めして外部の空気が入らないようにとのことであった。ドアを入るとカーテンで仕切られており、その中の部屋に叔母の横たわっているベッドが、薄いカーテン越しに透き通って見える。孫娘が夕食を終えて、片付けているところであった。
食事後の半分ベッドを立ててもらってもたれかけている叔母に挨拶をしたが、意識はあるようであるが、顔色は茶色に変わっており、入れ歯を抜いているため顔は一層小さくなって見える。目も開けられないようで、目をふさいだままであった。
「叔母ちゃんどないですか?」と呼びかけたら、目は開けずに「ハイハイ」と小声で答えていた。眠たそうに見えるが、家内や孫娘は話しかけている。眠いのなら寝かしてやったらと思うが、体温を測ったり、身体を擦ってやったりと世話も大変である。
部屋は個室で、窓際に付き添いの者が寝られるように椅子を組み合わせたまま置いてあった。「個室と同じやなあ」と尋ねると家内は、天井をさして、エアコンと違う四角いフィルターのようなものを指して、ここから空気交換をしているようで、外部の空気を遮断しているように言っていた。
果たしてどれだけ効果があるのか知れないが、叔母はそのような部屋に入らないといけない状態に陥っているようで末期なのであろう。