26日(土)の深夜に叔母が亡くなり、普通なら翌27日(日)が葬式であるが、当日が「友引」であるので通夜の日となり、葬式は翌日の28日(月)となった。
遺体は土曜日の早朝には自宅に戻り、そこで一泊して翌日昼過ぎに、自宅から明石の葬儀場へ移動することとなっていた。そのため昼前に宿泊の用意と葬式参列の式服を用意して、出発を待つ加古川へ立ち寄った。
まだ遺体はそのまま北枕で寝かされており、前日から連絡していた東京に出かけている孫も午後から戻って来た。彼は美容師である。28歳でこの家の次男で、長男は母親と理容店を営んでいるが、最近結婚して家を出て近くのマンションに暮らしており、仕事場としての自宅に戻ってきているので、毎日母親と過ごしているので、口喧嘩が耐えないようである。
その点、同じ兄弟でも性格は大分違うようである。弟の方は美容の職業柄かとても優しい。母親もそれで満足しているようである。
その彼が、帰ってくるなり祖母の横たわる前に座って泣いていた。胡坐を掻いて座っている背中の小さなゆれが、何よりそのことを物語っているようで、恥ずかしいから声を出して泣けないので、それを押し殺して泣いているようである。
葬儀屋がきて、棺に入れる前に着物などを着せて男手数名で棺に遺体を入れたてから、自然体がすきだとのことであったので、それほど死に化粧はしていなかったが、突然僕がすると言って、姉か母親の化粧道具入れを持って、棺の横に行き、得意であろう化粧をやり出した。
彼は細身の長身で、髪は肩までの長髪であるが、頭の後ろで一つに結んであった。いかにも芸術家との感じである。細い男にしては白い手を出して、手の平でなく手首の内側に何やら化粧品を塗って、左利きなので左手人差し指で祖母の頬などを軽く塗っていた。
昔テレビ映画で見た、名前は忘れたが、時代物で男美容師のドラマであったが、ふとその男の仕事としての美容師を思い出した。東京で有名タレントなども度々彼の店に来店があるようである
口紅も手首に先に塗ってから筆で伸ばしていた。瞬く間に赤みが少し見えるようになってきた。生気がみなぎるようである。
4人の家族が一緒に揃って食事や話をすることはない。まして毎日顔を突き合わせている親子のコミュニケーションが一番悪い。このような場作りは大変である。それが祖母の死亡により、まるで家族を結びつけたようにおばあさんが呼びかけたようである
何とかこれを機会に良く話し合い行って欲しいものである。