先日仕事をご紹介した58歳の男性のことであるが、長年大工仕事を自営されておられて、お勤めの経験は無い方であった。昨年以来仕事が無くなり廃業のような状況で、家に居ても奥さんからどうするんだと言われ、家にも居られず、会社に来て仕事を探しても年齢で落とされ、どうしたものかと相談に来られた。
現下の経済情勢では、建築土木の求人も少なく、有っても若い方に限定されており、中高年の出番は閉ざされているのが現状である。良くお話を聞いてみると、この方のお話には、先程お話したことが伝わっていなくて、堂々巡りを繰り返すことがわかった。時間を掛けてお話をするしかないので、紹介先をみつけて、先方に電話をして面接をお願いしたところ、担当者が居られずにその日の夕方か翌日に直接本人に連絡することとなった。地理に不案内ということで住宅地図をコピーしてお渡しした。勿論自宅から目的地までを案内したが、どうも方向音痴でもあるようである。
ご本人は一度帰る際に、その目的場所を探してみたいと帰られた。終了したのが午後1時で、隣りの席の人が食後の休憩から帰って来られて、まだ紹介中であったので驚いていた。普通は30分程度で終るのであるが、この方には2時間以上も費やしたこととなった。しかし一抹の不安は有った。
案の定というか、翌日午前中にその方がやって来られて、「昨日、紹介してもらった所は駄目でした。」とのことで求人もされていないようであるとのことであった。詳しく話を聞くと、先方からの連絡を待たずに、道を探してその会社まで来たので、折角だからと社長に会って就職面談をされたとのことである。
念のため先方に電話して確かめると、前日話した事務員が出られ、社長にも報告してない間に来社され、何も知らない社長にいきなり面接のお願いをされて困ってしまったことを話された。暫らくするとその会社の社長から、求人の取り消しなどしていないし、そのようなことも話していないと、お叱りの電話が入った。
どうもこの方の曖昧な記憶からこのようになったものである。その後もしかしてと、カウンセリングをされておられる相談員の方に連絡して、面談を受けてもらったら、矢張り私が思った認知症があるようである。
翌日その方は医者の意見書を持って相談員さんのところに来られたようである。中程度の認知症と診断されておられたようである。一見正常な方に見えて、明るく応対されておられるようである。早期発見早期治療であるが、「あんたボケて来よんと違うか?」など口が裂けても言えないが、家族や周りの方の注意も必要である。
各言う私も、家内から物忘れがひどいと言われているが、そろそろ始まったのかと思わないでもない。