「またお越し下さい」とは言えない会社である。会社で再会することは、その方の失業が続いていて就職先に困っておられることとなる。病院の退院と同じで戻って来られないことを願うばかりである。リピート客は無いのが良いのである。
毎朝テーブルの上やパソコンの端末器、電話機等をウエットティッシュで拭きながら、正直今日はどんな出合いとなるだろうと思って拭いている。一期一会であるかも知れないと思っているのはこの時だけで、開庁して大勢の求職者が入って来て、たちまち戦場化すると直ぐに先程思っていたことなど忘れてしまっている。
紹介後は、無難に「頑張って下さい」とお声賭けして送り出しているが、中にはその言葉から「俺は頑張っているつもりだが、年齢で落とされる。頑張って欲しいのは、年齢不問を何とかして欲しいあんたらや」と席を立ちながらこのように言われた年配の方がおられて、返す言葉も無かった。
確かに求人は年齢不問となっている。ところが我々紹介部門では実態に即して「会社は50歳までを希望されておられる」とか言って応募を見送るように指導しているが、何時も本末転倒していると思いながらの指導である。年齢不問であれば、実態がどうなっていようと法定であるので制限は許されない。従って、企業の年齢要請を無視して紹介をすれば良いのであるが、そうすると企業は、面接をする前に書類選考を行うようになる。現在失業者が多く、応募者の多い企業ではこれが大半である。そのような選考をされると、見えない所での選考であるので、応募者は全くわからないまま篩いにかけられることとなる。その結果落とされた方には「種々検討の結果、当社の選考基準に合致しないため」にとの連絡が入る。最近は文章連絡や履歴書の返送すらしなくなっている。携帯電話が主な連絡手段である。この繰り返しを受けておられる人が今日も又多く来所されることとなるのである。